川崎競馬厩舎訪問 〜小向トレセンにようこそ〜 2014/8 武井和実厩舎


◇この記事は川崎競馬馬主協会ニュース 2014年8月号に掲載されたものです◇



開業から4年目になる武井和実調教師。
青森県五戸町という馬産地に育ちながら馬とは無縁な農家の三男坊。高校を卒業すると三菱自動車のエンジニアとして就職した。

話をしていると、第一印象で受ける物腰のやわらかさとは違ったアクティブな一面が次々と飛び出してくる。
「学生の頃からバンドでドラムを叩いていました。 ジャンルはハードロック。音楽で飯を食いたいと目指したこともありましたね。さすがにそう甘くはなかったけど、就職してからもバンド活動をやって、 社内では応援団のブラスバンドに所属。三菱自動車川崎が都市対抗野球で優勝した東京ドーム戦では応援合戦でドラムを叩いていたんですよ」と意外な素顔。 高校時代には生徒会長や応援団長も務めていたという。

馬の世界へのきっかけになったのは伴侶に選んだ詩子さん。詩子夫人の祖父は故・武井歌次調教師、父はかつて川崎競馬の調教師補佐をしていた利夫さん、 そしてその弟は武井榮一調教師という競馬一家。
周囲の勧めもあって一念発起して転身したのが13年前のこと。34歳での脱サラだった。

いずれは調教師になりたいと厩務員として6年、調教師補佐として2年の経験を積んだ。計8年のキャリアは調教師になる最短ルートだが、 その間に担当した馬には現在川崎競馬場でコスプレ誘導馬として多くのファンに愛されているトライアンフトーチがいる。
「戸塚記念3着したように先行力があって能力は高かったけど、ヤンチャな面もありましたね。蹄骨を骨折して引退した後に望まれて誘導馬に。芦毛で馬っぷりの立派な馬体が見込まれたのでしょうね」と厩務員時代には日々一頭に三時間をついやす熱心さだった。

「馬に手をかけて一生懸命やれば結果が出ることに魅力を感じてこの仕事に飛び込みましたが、いざ自分で開業してみると馬がなかなか集まらず最初はたいへん。 初勝利するのに半年かかりました。昨年は2着が多く悔しい競馬も多かった。レースに出すからにはもっと勝ちにこだわっていきたいですね」と昨年暮にはブルーセレブで東京2歳優駿牝馬を優勝。
NARグランプリ2歳最優秀牝馬にも輝いた。牝馬三冠クラシックのさなかに調教中のケガで種子骨々折を負い、廃馬になってもおかしくないほどの重傷だったが、すぐさま休養に出すと、 今ではウォーキングマシンを使えるまでに回復。もうすぐ乗り運動も始められるという。復帰時期のメドは未定ながら競走馬として再起できる光が見えてきた。
「2歳、3歳それぞれに早熟、晩成と成長度合いを見ながら、担当厩務員とコミュニケーションを密にして馬の状態を共有することが大事」という武井和実厩舎はスタッフが7人。 今年は2歳が10頭入厩済みで、すでに2頭が出走し、これから続々とデビューする予定だ。

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