川崎競馬厩舎訪問 〜小向トレセンにようこそ〜 2014/8 吉橋淳一厩舎


◇この記事は川崎競馬馬主協会ニュース 2014年8月号に掲載されたものです◇



東京都文京区出身の吉橋淳一調教師。「就職を考えたのがバブルが弾けた頃。どうせ厳しいのなら自分の好きなことがしたい」と叩いたのが競馬界の門。
下河辺トレーニングセンターに就職し、1年半後には父親の仕事の都合でサラリーマン生活も経験したが、競馬の仕事が忘れられなかった。
厩務員になりたいと大井、川崎と問い合わせたが門前払い。 せめて見学だけでもさせてほしいと食い下り、川崎の厩務員会事務所を訪ねると「ちょうど1つ枠が空いた」という絶妙なタイミングは運命的だった。

高月由次(高月賢一調教師の父上)厩舎で厩務員となって5年目で調教師補佐へ転向、鈴木敏一厩舎に移って補佐5年目で調教師に合格した。
補佐、調教師試験ともに一発合格だったというからお見事である。「自分から行動を起こさないと何も始まらない」がモットーなのだという。

現在は42歳になる吉橋師がそもそも馬と出会ったのは大学生時代に通った乗馬クラブ。芝浦工大時代を過ごしたのが1990年前後のオグリキャップブームの頃。
ファンのひとりとして競馬に魅了され、特に好きだった馬はユキノサンライズ。芦毛の美しい馬体ばかりでなく抜群のスピードでGT馬を次々と完封した女丈夫でもあった。 結婚して長女が誕生するとユキノ(雪乃)と名付けたほど思い入れが強かった。長男は忠勝くん。 「生まれたのが高月厩舎で補佐をやっていた時だから最高の補佐役という意味合いもあって、 徳川家康の功臣として名を成した本田平八郎忠勝が命名の由来です」。「ただ勝つ」というゲンも担いだ。

吉橋厩舎は昨年の勝率が16.7% 今年も15.2パーセントと高水準を維持している。
「開業から7年になりますが当初から勝率、連対率を意識してきました。 12頭立て、14頭立てで考えれば8%くらいが並の厩舎になる計算ですがそれ以上の数字を出さないと意味がない」と、 どの馬もまんべんなく成績を出さないとこの数字は維持できないが、連勝馬が多いイメージもある。

「午前中は運動が中心ですが、午後にはアスリートとしてのケアに重点を置いて苦しいところを取ってあげる。 いったん調子を落としてもすぐに立て直しできるのがうちの厩舎の自慢できるところです。調教方法やカイバにしても悪くなったらすぐ修正するようにしています」 と美浦や栗東に足を運んで様々な厩舎を見ることで考え方や馬に対する取り組み方を見聞きし吸収しているという。
「それからもうひとつ。スタッフの優秀さは自慢できること。信頼して任せられるスタッフばかりです」と、調教で馬を仕上げる腕利きとして知られる福田和浩厩務員、 元ジョッキーで丁寧な仕事ぶりに定評のある中地雄一厩務員。真面目で黙々と仕事をこなす池田節夫厩務員。同じ方針に向かって共に仕事をするスタッフの存在は大きい。

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