川崎競馬厩舎訪問 〜小向トレセンにようこそ〜 2015/2 林隆之厩舎


◇この記事は川崎競馬馬主協会ニュース 2015年2月号に掲載されたものです◇



林調教師は神奈川県出身の42歳。動物の専門学校時代のゼミ研修で馬に魅了されるとすぐさま中退して早田牧場に就職したという熱血漢。
その後、叔父に当たる武井榮一調教師の元で厩務員生活をスタートさせ、池田孝厩舎に移ってからは調教師補佐として片腕となって支えてきた。  

早田牧場で過ごした4年間は調教師になってからも大きな糧になっている。
のちに宝塚記念馬となるマーベラスサンデーを馴致から栗東入厩までにたずさわった経験、そして現在につながる宝となっているのは早田牧場時代の仲間たちの存在だ。 リバティホースナヴィゲイトを経営しイチビリ等を所有している佐久間拓士オーナーは早田牧場時代の後輩で、生産者の村上欽哉さんも同じく後輩、 さらには月に一度は林厩舎に出向いてスタッフにナチュラルホースマンシップの講習をしている持田裕之さんもまたいっしょに仕事をした仲間なのである。

ナチュラルホースマンシップとは人と馬との自然なコミュニケーションを重視する考え方。 野生の馬群を率いるリーダー馬は逃げるスピードや距離感を自分の動きによって伝えて安全な場所に移動させる。そのリーダー役に人間がなって、 ボディランゲージや発する音によってメンタル面をコントロールして導いていく。 馬と人の間に紐がなくても並んで歩けるようになるのだという。
「池田調教師が取り入れているウエスタンの考えにも通じるんですが、普通に調教できない難しさのある馬もメンタル的なトレーニングをすることでレースに集中し力を発揮できるようになります。 今やセリ馬のコンサイナーの間ではスタンダードになっていますね。スタッフと一緒に学んでいるところですが、ナチュラルホースマンシップを取り入れて結果が伴うとやりがいがあります。 また馬はアスリートでもありますから勝つためには調教で負荷をかけることになります。そのぶんケアが大切で、呼吸器系を整えるためには吸入器なども利用しています」とオリジナルの調教法を導入している。
入厩してきた馬にはすべてナチュラルホースマンシップの手法を施され、教え込んだルールを馬が納得して行動することで関係性が変わってくるという。

開業6年目になる林隆之厩舎は18馬房を5人のスタッフと共に切り盛りしているが、林調教師はなぜか芦毛に縁がある。
「池田厩舎での厩務員時代には4年連続して芦毛馬で新馬戦勝ち。初出走、初勝利したオートホワイティも芦毛。 初重賞のパンタレイも芦毛です」。
パンタレイは2013年京浜盃で5馬身ちぎって逃げ切り圧勝。その後中央移籍を経て、再転入し休養を挟みながらようやく復調ムード。完全復活の日も近そうだ。いずれ引退の日が来たときには秦野国際乗馬クラブに引き取られ、川崎競馬の誘導馬として新たな道を歩むことも決まっているという。

← 調教師紹介に戻る

← 厩舎訪問一覧に戻る